設計図の書き方

前の章までで、セクションの役割と、Aメロ→Bメロ→サビの盛り上げ方を学びました。 頭の中にある「こういう曲にしたい」という構想を、迷わず形にできるように 1枚の地図 にまとめておくと、制作がぐっと楽になります。この章では、その地図に あたる 「設計図」 という言葉を定義し、何をどう書くかを決めます。

設計図とは何か

設計図を先に書く利点は2つあります。1つは、全体の起伏を俯瞰できる こと。 Aメロは落ち着いて、サビで盛り上げる——という流れを、音を作る前に並べて確認できます。 もう1つは、作業を分割できる こと。「次はBメロの進行を決める」と、やることが はっきりするので、手が止まりにくくなります。

設計図に書く項目

設計図には、曲全体の設定セクションごとの中身 の2階層を書きます。 具体的には次の項目です。

曲全体の設定

項目書く内容
キー曲の調C メジャー
テンポ曲の速さ(BPM)90
小節数全体の長さ(各セクションの合計)12 小節

各セクションの中身(セクションの数だけ並べる)

項目書く内容
並び・名前上から演奏順に。例:Aメロ → Bメロ → サビ
長さそのセクションの小節数
コード進行そのセクションで鳴らすコードの並び(度数+実コード)
主旋律メモ歌メロ/主旋律の方針(音域・密度・モチーフなど)
役割メモそのセクションの役割・意図のひとことメモ

ポイントは、各セクションを1行として、上から演奏順に並べる ことです。こうすると、 表を縦に眺めるだけで「Aメロは低く、サビで上がる」という盛り上がりの設計が ひと目で読み取れます。

実例:模範設計図を表に展開する

抽象的な書式だけだと分かりにくいので、最終演習で使う 模範設計図 を、いま定めた 書式に当てはめて見てみましょう。これはオリジナルのワンコーラス(Aメロ→Bメロ→サビ)で、 共通題材に沿った キー C major / テンポ 90 BPM / 全 12 小節 です。

セクション長さコード進行(度数 → 実コード)役割メモ
Aメロ4 小節I–vi–IV–V(C–Am–F–G)静かに入る語り出し。中音域・低密度で間(休符)を多めに取り、I で始め V で締めて Bメロへ橋を架ける。
Bメロ4 小節ii–V–iii–vi(Dm–G–Em–Am)盛り上げる橋渡し。音価を細かく密度・音域を上げて推進力を作り、vi で終えてサビの I への解決を焦らす。
サビ4 小節I–V–vi–IV(C–G–Am–F)最も主張する山(hook)。最高音域・最高密度で、頭に最高音 E5 を置いて山を作り、I への解決で開放感を出す。

縦に読むと、Aメロは静かに語り出し、Bメロで密度・音域を上げて橋渡しし、サビで最も 主張する——という 盛り上がりの設計 が、役割メモと進行の両方から読み取れます。 各セクションの長さの合計(4 + 4 + 4)が、全体の小節数 12 に 一致していることにも注目してください。これは設計図の小さな検算になります。

仕上がりチェックリスト

設計図が書けたら、次の項目がすべて埋まっているか確認しましょう。1つでも空欄が あると、制作の途中で手が止まる原因になります。

まとめ

この章では、本編で新しく使う用語 設計図(1曲分・1コーラス分の構成をまとめた計画書)を 定義し、その書式を定めました。書く項目は、曲全体の設定(キー・テンポ・小節数)と、 セクションごとの中身(並び・長さ・コード進行・主旋律メモ・役割メモ)の2階層です。 最終演習の模範設計図を実例として表に展開し、縦に読むと盛り上がりの設計が読み取れること、 各セクションの長さの合計が全体の小節数に一致することを確かめました。次の章末演習では、 このチェックリストを使って、自分のワンコーラスの設計図を書きます。