頻出進行の型 — カノン・王道・小室
発展編へようこそ。 ここからは、講座本編を終えた(または理論編第5章まで学んだ) 人向けに、作曲の選択肢を広げていきます。最初のテーマは コード進行のレパートリー です。
本編では一貫して I–V–vi–IV(C–G–Am–F) を土台にしてきました。第5章では ほかに ii–V–I と I–vi–IV–V も学びましたね。この章では、その先にある 日本のポップスで特によく使われる3つの型 を覚えます。名前で呼べる型が増えると、 曲を聴いたときに「あ、この進行だ」と分かるようになり、自分の曲づくりでも 「今回はこの型で行こう」と選べるようになります。
カノン進行 — I–V–vi–iii–IV–I–IV–V
まずは最も有名な型のひとつ、カノン進行 です。パッヘルベルの「カノン」に 由来する8つのコードの並びで、度数では I–V–vi–iii–IV–I–IV–V(C–G–Am–Em–F–C–F–G) です。
機能で読むと T→D→T系→T系→S→T→S→D と、安定と緊張を規則正しく往復しながら、 ルートが C→G→A→E→F→C→F→G と階段のように下がっていく(下行して戻る)のが 特徴です。この整った下行が生む 端正で感動的な、物語が進んでいくような響き から、 バラードや卒業ソング、壮大なサビで定番になっています。8コードで1周と長いぶん、 1周のあいだにメロディをたっぷり展開できるのも持ち味です。
王道進行 — IV–V–iii–vi
次は、その名も 王道進行 と呼ばれる IV–V–iii–vi(F–G–Em–Am) です。 J-POP のサビで圧倒的によく使われる型です。
面白いのは I(トニックの主役)が1度も出てこない ことです。機能では S→D→T系→T系 — サブドミナントの広がりから始まり、ドミナントで持ち上げ、 Em・Am という マイナーのトニック系 に着地します。主役の C に帰らないまま 回り続けるので、解決しきらない浮遊感と切なさ が残り続けます。この 「明るいのにどこか切ない」感じが、エモーショナルなサビにぴったりはまります。
小室進行 — vi–IV–V–I
3つめは 小室進行、度数で vi–IV–V–I(Am–F–G–C) です。1990年代に 小室哲哉さんが多用したことからこの名で呼ばれます。
機能では T系(マイナー)→S→D→T です。マイナーの vi から始まって、最後に メジャーの I へ抜ける のがポイントで、暗さ・切実さから始まり、G の緊張を経て パッと視界が開けるような解決に至ります。この 疾走感とドラマ性 が、 ダンスビートやアップテンポの曲と相性抜群です。
まとめ
- カノン進行(I–V–vi–iii–IV–I–IV–V) — 端正で感動的。バラード・壮大なサビに
- 王道進行(IV–V–iii–vi) — I に帰らない浮遊感と切なさ。エモーショナルなサビに
- 小室進行(vi–IV–V–I) — 暗から明へ抜ける疾走感。アップテンポ・ダンス系に
第5章の3つと合わせて、これで 6つの型 が手札になりました。次のレッスンでは、 これまで触れてこなかった マイナーキー の世界に踏み込みます。