分析の観点と手順

ここからは、これまでと逆向きの作業に取り組みます。これまでの章では「ゼロから曲を 組み立てる」側を学んできましたが、世の中にはすでに完成された曲がたくさんあります。 気に入った曲が なぜそう聞こえるのか を読み解く——それが 分析 です。分析は、 参考曲から学んで自作に活かすための入り口になります。この章ではまず、何をどの順で 見ていくかという 観点と手順 を決めます。

分析とは「曲を観点ごとに分解して読む」こと

分析とは、漠然と「いい曲だな」で終わらせず、曲を いくつかの決まった観点に分解して、 それぞれが何をしているかを言葉にする作業です。これまでの章で、自分で曲を作るときに 決めてきた項目——キー、テンポ、コード進行、セクション、盛り上がり——を、今度は できあがった曲の側から逆に読み取る と考えると分かりやすいでしょう。作るときの 設計図を、聴いて埋めなおすイメージです。

そのため、分析で使う言葉はすべて、これまでに確定済みのものをそのまま流用します。 進行(コードの並び)、セクション(Aメロ・Bメロ・サビなどのまとまり)、 盛り上がり(セクションを追うごとのエネルギーの上げ方)——いずれも新しく 覚え直す必要はありません。

分析の5つの観点

曲を読むとき、次の5つの観点を順に当てはめます。この5つは、自分で曲を設計するときに 決めた項目とちょうど対応しています。

観点何を読み取るかどう調べるか
① キー / テンポ曲の調と速さ(BPM)全体を聴き、主音(落ち着く音)と1分間の拍数を確かめる
② コード進行各セクションでどんなコードが、どの順で鳴るかコードを度数(I・IV・V・vi など)に置き換えて並べる
③ 曲構成セクションの並び(例:Aメロ→Bメロ→サビ)と各長さ雰囲気が切り替わる地点で区切り、各まとまりを名づける
④ メロディ / 各パートの動き各セクションの主旋律の音域・密度・動き方セクションごとに、高さ・音数・跳躍/順次進行を観察する
⑤ 盛り上がりの設計セクションを追ってエネルギーがどう上がるか①〜④の差(音域・密度・進行の動き)を縦に並べて比べる

ポイントは、①→⑤の順に、大きいところから細かいところへ降りていく ことです。 まず曲全体のキーとテンポという土台を押さえ(①)、次に和声の骨組み(②)、 そのうえで曲全体の地図(③)を描き、各セクションの中身(④)を観察し、最後に それらの差を縦に比べて曲全体の起伏(⑤)を読み取ります。

分析の手順

観点が決まったら、実際の手順は次のように進めます。

  1. 全体を通して聴く — まず1〜2回、曲全体を通して聴き、おおまかな印象 (明るい/暗い、速い/遅い、どこが山か)をつかみます。
  2. キーとテンポを決める(①) — 落ち着く音=主音を探してキーを、拍を数えて テンポを確かめます。
  3. セクションに区切る(③) — 雰囲気が切り替わる地点で曲を区切り、各まとまりを Aメロ・Bメロ・サビ…と名づけ、それぞれの長さ(小節数)を数えます。
  4. セクションごとに進行を度数で書き出す(②) — 各セクションのコードを順に拾い、 度数に置き換えて並べます。
  5. セクションごとにメロディと各パートの動きを観察する(④) — 主旋律の音域・密度・ 動き方を、セクション単位でメモします。
  6. 観点を縦に並べて盛り上がりを読む(⑤) — ①〜④で集めたメモを表に縦に並べ、 セクションを追うごとに音域・密度・進行の動きがどう強まるかを読み取ります。

この手順で出てきた結果を1枚の表(分析シート)にまとめると、曲の設計が ひと目で分かります。章末演習では、この分析シートを実際に埋めます。

著作権への配慮 — ここが最重要

分析の練習をするとき、絶対に守ってほしいルール があります。

この配慮があるため、本教材では特定の既存曲を題材にはしません。次の章では、本教材が 分析練習のために自作したオリジナルの例示曲 を題材に、ここで決めた観点と手順を 実際に当てはめていきます。オリジナル素材なら、譜面も音源も気兼ねなく載せて、 分析結果と音を突き合わせながら学べます。あなた自身が好きな既存曲を分析する場合も、 観点と手順は同じ で、ただ「結果を自分のメモにとどめる(転載しない)」点だけ 守ってください。

まとめ

この章では、既存曲を読み解く 分析の5つの観点(①キー/テンポ ②コード進行 ③曲構成 ④メロディ/各パートの動き ⑤盛り上がりの設計)と、①から⑤へ大きいところから 細かいところへ降りていく 手順 を定めました。観点で使う言葉(進行・セクション・ 盛り上がり)は、これまでに確定済みのものを流用します。そして何より、既存曲の 譜面・歌詞・音源は転載せず、曲名への言及と構造の読み取りにとどめる という著作権上の 配慮を確認しました。次章では、この観点と手順を、本教材が用意したオリジナルの 例示曲に実際に適用して、分析の進め方を実演します。