マイナーキーの進行

ここまでの講座は、ずっと 明るい響きのメジャーキー(C メジャー) の世界でした。 このレッスンでは、切なさや哀愁を正面から扱える マイナーキー に踏み込みます。 入り口は、実はすでに知っている場所にあります。

平行調 — C メジャーと A マイナーは同じ7音でできている

第3章で学んだ C メジャースケール(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ)を、 ラ(A)から並べ直すA マイナースケール(ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ)に なります。使う音はまったく同じ、中心(主音)だけが違う — この関係を 平行調 と呼びます。C メジャーの平行調が A マイナー、というわけです。

同じ7音なのに、中心が変わるだけで響きはこれだけ変わります。聴き比べてください。

まずはメジャー(I–IV–V–I = C–F–G–C)。

次にマイナー(i–iv–V–i = Am–Dm–E–Am)。

同じ「出発 → 広がり → 緊張 → 帰着」の流れなのに、後者は 陰影のあるドラマチックな 響き になります。これがマイナーキーの世界です。

A マイナーの主要な度数

マイナーキーでも考え方は第5章と同じで、スケール音の上にコードを積みます。 本講座で使う主要な度数は次のとおりです(マイナーの度数は小文字の i で 始めるのが慣例です)。

度数コード(A マイナー)役割の目安
iAmトニック(帰る場所)
ivDmサブドミナント(広がり)
VE(メジャー)ドミナント(緊張。下の注を参照)
VIF切なさをやわらげる中継
VIIG明るく持ち上げる中継
IIIC平行調のトニック。明るい表情

代表進行 1 — i–VI–III–VII(Am–F–C–G)

マイナーキーの代表的な循環がこれです。切なさから始まり、F・C・G と 明るいコードを渡り歩いて、また Am へ帰ってくる — 哀愁と前向きさが同居する、 現代のポップスやロックで非常によく使われる型です。

気づいたでしょうか — 使っているコードは前のレッスンの 小室進行(Am–F–G–C) と 同じ4つです。並び(とどのキーの住人として聴くか)が変わるだけで、表情が変わります。

代表進行 2 — i–iv–V(Am–Dm–E)

もうひとつは、より古典的で密度の濃い i–iv–V です。タンゴやシャンソン、 歌謡曲の系譜に連なる、濃い哀愁 の進行です。

まとめ

  • 平行調: C メジャーと A マイナーは同じ7音。中心が変わると響きが変わる
  • マイナーでも度数と機能の考え方はそのまま使える(i・iv・V・VI・VII・III)
  • マイナーの V はハーモニックマイナー由来の E メジャー がよく使われる
  • 代表進行: i–VI–III–VII(哀愁と前向きさ)/ i–iv–V(濃い哀愁)

次のレッスンでは、増えた手札から 「どの進行を選ぶか」 を考えます。