モチーフとフレーズ
メロディ章では、コード進行の上に短いメロディを作る基礎を学びました。この章では、 その 短いメロディの断片 をどう育てて、まとまりのある1セクション分の メロディへ広げるかを考えます。最初の一歩として、この編で初めて登場する 「モチーフ」と「フレーズ」 という2つの言葉を、ここではっきり定義します。 土台はこれまでと同じ共通題材 I–V–vi–IV(C → G → Am → F)/ C メジャー / 90 BPM / 4小節 です。
モチーフとは何か
曲のメロディをよく聴くと、短いけれど 耳に残る音のかたまり が、形を変えながら 何度も出てくることに気づきます。この「短い特徴的な音型」が モチーフ です。 モチーフは、これから育てていくメロディの 種 にあたります。
モチーフを「モチーフ」たらしめるのは、短さ と 特徴の明確さ です。長すぎると 覚えられず、特徴がぼやけていると変形したときに元とのつながりが聴き取れません。 逆に、短くて特徴がはっきりしていれば、反復しても飽きにくく、変化させても核が 残るので、メロディ全体に 統一感 を与えられます。
例:1小節の上行モチーフ
具体的に見てみましょう。下のピアノロールに表示しているのは、この章で使う モチーフ です。共通題材の1小節目(I=C)に乗る、たった3音の短い音型です。
- 音高 — C5 → D5 → E5(ドレミの上行)。
- リズム — 4分音符・4分音符・2分音符(短・短・長)。最後の E5 を長く伸ばして 着地させます。
C5 と E5 はコード C のコードトーン、あいだの D5 は経過音です。音高は なめらかに上っていく動き、リズムは 短く入って最後に長く止まる山 という、 2つの分かりやすい特徴を持っています。だから、あとで音を変えたりリズムを変えたり しても、「あの上行のかたち」として聴き取れます。
再生して、短短長で上っていく この形を耳に焼き付けてください。次の章では、 このモチーフを反復・移高・リズム変化で展開していきます。そのとき「元の形」として 基準になるのが、いまここで聴いた音型です。
モチーフからフレーズへ
モチーフは「種」ですが、種だけでは曲のメロディになりません。モチーフを 反復したりつないだりして、ひとまとまりの長さ にすると、聴いて意味のある メロディの単位になります。このまとまりを フレーズ と呼びます。
たとえば、先ほどのモチーフ(C5→D5→E5)を そのまま2回つなぐ と、1小節の種が 2小節のまとまりになります。下のピアノロールは、モチーフを反復して連ねた もっとも単純なフレーズです。同じ形が2回くり返されることで、「ひとまとまり」と 感じられるのが分かります。
これはまだ「反復だけ」の素朴なフレーズで、少し単調に聞こえるかもしれません。 ここに 変化 を加えてメリハリを付ける——それが次章で学ぶ「展開」です。 モチーフ(種)→ 展開(反復と変化)→ フレーズ(まとまり)という流れを、 頭に入れておいてください。
まとめ
この章では、本編で新しく使う2つの用語を定義しました。モチーフ は「短い特徴的な 音型」で、メロディを育てる種です。フレーズ は「モチーフをつないだまとまり」で、 聴いて意味のあるメロディの単位です。例として、共通題材の上に乗る上行モチーフ (C5→D5→E5、短短長)をピアノロールで見て・聴いて、それを反復して連ねると素朴な フレーズになることを確かめました。次の章では、このモチーフを 反復・移高・リズム 変化 で展開し、単調にも散漫にもならない、ほどよいバランスのフレーズへ広げる方法を 学びます。