オリジナル例示曲で分析を実演

前章で決めた 分析の5つの観点と手順 を、ここで実際に使ってみましょう。題材は、 本教材が分析練習のために自作した オリジナルの例示曲 です。既存曲ではないので、 進行・メロディ・音源を気兼ねなく載せられます。観点ごとに「分析でこう読み取った」と 書き、すぐ下の部品で その読み取りどおりに音が鳴るか を耳で確かめていきます。

この例示曲は、キー C major、テンポ 92 BPMAメロ → Bメロ → サビ のワンコーラスで、全 12 小節 (各セクション 4 小節ずつ)です。

観点① キー / テンポ

まず土台です。全体を通して聴くと、最後に C に落ち着いて聞こえます。これが主音= キーで、この曲は C メジャー です。拍を数えると 92 BPM。 曲構成章までで使ってきた共通題材(C メジャー)と同じキーですが、テンポは少しだけ 速い設定になっています。臨時記号(♯・♭)は出てこず、すべて C メジャーの ダイアトニック(調内)のコードと音で書かれています。

観点② コード進行(セクション別に度数で読む)

次に和声の骨組みです。コードはセクションごとに性格が変わります。度数に置き換えて 並べると、各セクションが何をしているかが読み取れます。

Aメロ:I–iii–IV–ii(C–Em–F–Dm)

トニック I(C) で安定して始まり、最後を ii(Dm) に置いています。ii は 終止せず次へ含みを残すので、分析としては「I で落ち着いて語り出し、終止せずに Bメロへ続ける」と読めます。下の ChordPlayer で実際に鳴らすと、最初の安定と、 最後で「まだ続く」感じが聴き取れます。

Bメロ:vi–V–IV–V(Am–G–F–G)

vi(Am) から動かし、最後を V(G) で反復しています。V はドミナント (サビの解決を引っ張る役)なので、「V を繰り返してサビ手前の緊張・推進力を 作っている」と読めます。聴くと、Aメロより前のめりで、次(サビ)を待たせる 響きになっています。

サビ:IV–V–I–vi(F–G–C–Am)

IV→V→I(F→G→C) という王道の解決で一気に開け、最後の vi(Am) で余韻を 残します。「サブドミナント→ドミナント→トニックの王道解決が山を作る」典型です。 聴くと、Aメロ・Bメロより明快に解決して、ここが曲の山だと分かります。

観点③ 曲構成

雰囲気の切り替わりで区切ると、この曲は Aメロ(語り出し)→ Bメロ(橋渡し)→ サビ(山) の3セクションで、それぞれ 4 小節ずつ、 合計 12 小節のワンコーラスです。②で見たとおり、進行の性格も 「安定 → 推進 → 解決」とセクションごとに役割が分かれており、構成と進行の読みが 一致しています。下の ChordPlayer は、Aメロ→Bメロ→サビの 進行を通して 鳴らします。 区切りで響きが切り替わるのを聴き取ってください。

観点④ メロディ / 各パートの動き

次に主旋律です。セクションごとに音域・密度・動き方を観察します。

  • Aメロ — 中音域(D4〜C5 あたり)中心で、音価は長め・休符が多く、低密度。 短い音型のあいだに「間」を取って語る動きです。
  • Bメロ — 音価を細かく(8分を交え)、音域をやや高め(E5 まで)にして 密度を 上げ、高ぶりを作っています。
  • サビ — 最高音域(頭に最高音 F5)・最高密度。冒頭で山(hook の核)を作り、 以降コードトーンで明快に動いて、最後はロングトーンで余韻を残します。

下の PianoRoll は曲全体の主旋律を 音高×時間 で表示します。左の鍵盤目盛りで 高さを見ると、Aメロが低めにとどまり、サビで一段高く跳ね上がる——という 音域の 上昇 が目で確認できます。

同じ主旋律を、PhrasePlayer で 通して 聴いてみましょう。Aメロの静けさから、 Bメロの細かい動き、サビの高い山へと、音域と密度が段々に上がるのが耳で分かります。

観点⑤ 盛り上がりの設計(主旋律 × 進行を重ねて確かめる)

最後に、①〜④を縦に並べて 盛り上がりの設計 を読みます。Aメロ→Bメロ→サビと 進むにつれ、音域は上がり、密度は増し、進行は「安定→推進→解決」と山へ向かう—— これがこの曲の起伏です。

分析結果が本当に音と一致しているかは、主旋律とコード進行を重ねて同時に聴く のが いちばん確実です。下の BandPlayer は、次の2レイヤーを共有トランスポートで同時に 再生します。

  • 主旋律 — 曲全体の主旋律(analysisMainMelody)
  • 進行 — 曲全体のコード進行(analysisProgression)

主旋律のコードトーンが、その小節の進行とそろって溶け合うこと、そしてサビで主旋律と 進行がそろって頂点に達することを耳で確かめてください。レイヤーごとにミュートを 切り替えれば、主旋律だけ・進行だけにして、④と②の読み取りを別々に確認できます。

主旋律(Phrase)とコード進行(ChordProgression)は 別々の Playable のまま、 同期して鳴っています。分析で読み取った「サビが山」という結果が、重ねて聴くと ひとつの音として確かに頂点になっていること——これが、分析結果と音を対応づける ということです。

まとめ:観点 → 読み取りの対応表

最後に、5つの観点でこの例示曲を読み取った結果を1枚にまとめます。これが分析シートの 完成形のイメージです。

観点この曲の読み取り
① キー / テンポC major / 92 BPM(ダイアトニックのみ・臨時記号なし)
② コード進行Aメロ I–iii–IV–ii / Bメロ vi–V–IV–V / サビ IV–V–I–vi(安定→推進→王道解決)
③ 曲構成Aメロ→Bメロ→サビ の3セクション、各 4 小節・全 12 小節
④ メロディ / 動きAメロ=中音域・低密度/Bメロ=やや高め・密度up/サビ=最高音域・最高密度(頭に F5)
⑤ 盛り上がりの設計セクションを追って音域↑・密度↑・進行は解決へ。サビが山(hook)

この章では、前章の5つの観点と手順を、オリジナル例示曲に当てはめて実演しました。 各セクションの進行を度数で読み、構成を区切り、主旋律の音域・密度を観察し、最後に 主旋律と進行を重ねて聴いて、分析結果と耳で聴こえる音を対応づけ ました。次の 章末演習では、この観点に沿って、あなた自身が分析シートを埋めます。